山陰・山陽をめぐる旅で訪れた山口県岩国。
ほんの寄り道のつもりだったのに、気づけばとことん楽しんでいた。
旅の“ついで”などと言うのが申し訳なくなるほど、景色も味も思い出もぎっしり。
そんな旅の記録をシェアします。ソフトクリームだらけの珍スポットにも注目!
【旅の基本情報】
項目 | 内容 |
---|---|
エリア | 岩国(山口) |
旅の日数 | 2泊3日の1日目の午前 |
旅のメンバー | 友人と2人 |
予算 | 1人あたり3,000円(岩国内) 交通費別 |
交通手段 | バス/ロープウエー |
【旅に出た理由】
羽田発で宮島へ行くなら、山口県の岩国錦帯橋空港がアクセス良し。当初の予定では、そのまま宮島へ直行するはずだった。
「岩国ってどこや? ちょい調べる」
「なんか有名な橋あるらしい。日本三名橋だって」
「ふーん、日本人って三大○○好きよな」
「空港着くの朝8時。時間あるし、見てみる? せっかくだし」――というノリで決まった“ついでの岩国”。楽しめるかどうか半信半疑のまま、我々は一歩踏み入れてみることにした。
【旅の流れ】
1日目

岩国錦帯橋空港からバスを乗り継いで、約40分で錦帯橋に到着。山と川をバックに五連アーチがきれいに決まっていて、さっそくカメラを構える。
「アーチのクビレ、キレてる!」
「その曲線、仕上がりエグいて!」
「構造の難解さ、IKEAの説明書超えとるやないかい!」
ボディビル大会のコールを模した賛辞でもてはやし、シャッターを連打すれば、橋は機嫌を良くしさらに威厳が増す――気がする。
勝手に満足したところで、いよいよ渡橋。

チケットは「錦帯橋+ロープウエー往復+岩国城」のセット券(大人970円)がお得。これ一枚で観光の導線がスッと通る。
「橋を渡るの課金制かよ!」とケチが顔を出したが、世界遺産登録を目指してるらしいので、応援スパチャと解釈して歩き出す。

ロープウエーでひと山越える。文明のチートである。到着して「ここで終わり?」と油断した瞬間からが勝負。天守まで“わりと歩く”。今日は真夏日、上り坂。
「なんか暑すぎて腹立ってきた」
近ごろの地球に対しぶつぶつと文句を垂れつつ、なんとか岩国城の天守に到着した。
天守は展望台。町が丸ごと見える。
錦川の蛇行、城下の碁盤、さっき渡った錦帯橋が指でつまめる豆サイズになった。
「平地の川ってやっぱりくねくねしてんのな。たぶんあっちに砂が堆積してて……」
「高校地理? 絶景を教材扱いとは、なんて贅沢な」

城内には甲冑や刀がずらり。由来や銘の格までは正直知ったこっちゃないが、金具の艶と重さに男心がくすぐられ、ついニヤニヤしてしまう。
推しの刀を見つければテンションが上がる。
時は戦国――脳内で法螺貝のあの音と出陣の太鼓が鳴り響く。
「俺、やっぱ令和でええわ。」

日本一ソフトクリーム「むさし」へ。
おびただしいほどのフレーバー、その数なんと222種類。アンミカが認知できる白よりも多いのだ。中でも目を引くのは変わり種。にんにく? カレー? すっぽん? 悪ふざけ一歩手前みたいなラインナップに動揺しつつ、同時に強く惹かれる。
せっかくなので「ラーメン味」に挑戦。

おそるおそるひと口――
「…あっ、意外とイケるわこれ」
バニラベースにベビースターを“練り込み+トッピング”した感じで、ザクッと、しょっぱ甘い。少なくとも罰ゲームにはならない。
食べ物としてしっかり成立しているため、もしこれが家系の濃厚豚骨しょうゆ味であれば白米を要求してしまっただろう。
それが”スイーツ”として定義できるかどうかは、また別のお話。
店の人いわく、「変わり種でほんとに旨いのは醤油、人気は納豆」。そのほかが“おいしい”かどうかは人それぞれ…とのこと。答え合わせは各自の舌でどうぞ。

むさしはソフトクリームだけではない。ちょうど腹も減ってきた頃合い、奥の食堂で岩国寿司と瓦そばを頼む。
岩国寿司は、想像の“1.5倍”は押されている。角ばった長方形が不意に大学時代の下宿アパートを思い出させた。
続いて瓦そば。熱の残る瓦にそばがじゅっと触れて香ばしい。外周はパリパリ、中央はモチモチ。食感が交互に訪れてくるから飽きない。
岩国グルメ、いい感じ。
岩国寿司は別名「殿様寿司」。江戸時代に岩国藩主・吉川公へ献上されたという言い伝えが由来。
瓦そばは、西南戦争で兵士が瓦を“鉄板代わり”にした話に着想を得た料理で、発祥は下関・川棚温泉の「元祖 瓦そば たかせ」。
【思い出日記】
旅行全体のメインではなかったが、岩国錦帯橋空港から近いので“ついで”で立ち寄った岩国。旅先における「せっかくなので」は、だいたい正解を引く呪文である。
インバウンドの波もまだ穏やかで、ゆったり静かな時間を過ごせるだろう。
大人の夏休み、という手触り。BGMには久石譲を採用したいところ。
